倩人 ; 140字小説 (@tsuratsura_to_) 's Twitter Profile
倩人 ; 140字小説

@tsuratsura_to_

書き溜めた短編小説を 良ければお題をください / #140字小説 #ショートショート

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calendar_today11-06-2016 22:57:53

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久々に仕立てた特注スーツを着て、気分よく出勤。鏡に映る自分は映画の主人公みたいだ。 「お、今日のスーツすごいね」 同僚が口々に褒めてくれる。 昼休み、得意げにポケットに手を入れた瞬間、内ポケットから見覚えのない紙が一枚。 「支払いはまだだぞ。返せないなら覚悟しておけ」

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年老いた魔女は魔法を忘れていた。鍋に呪文を唱えるはずが、言葉が出てこない。火すらつけられない。困り果て村の少年に助けを求めた。彼は手際よく火を起こし、スープを作り始める。「これでいい?」と少年が差し出したスープを一口飲み、魔女は静かに微笑んだ。どんな魔法より、心は温まっていった。

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クリスマスに投稿を忘れていた。慌てて「メリークリスマス!」とだけ書いてSNSに上げると、予想外の反応が来た。 「最高!」「今年も楽しみにしてた!」 悪くないなと思っていたら、よく見ると去年も一昨年も同じ投稿だった。 もはや伝統になっているらしい。メリークリスマス。

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ジムで張り切りすぎてふくらはぎを痛めた。医者の診断は「肉離れ」。帰り道、晩ごはん用に鶏肉を手に取り、妙な親近感を覚えた。 ふくらはぎをアイシングしながら鶏肉を焼いた。焼き目がつくたびに、妙に共感してしまう自分がいた。「俺もこんな感じで壊れたんだろうな」と。

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フォークを刺して一口食べる。足にしみる味がやけにリアルだった。 フォークを置き、ふと窓の外を見ると、隣家のランニングマシンの音が微かに聞こえる。鶏肉をかじりながら、己の運動不足を反省。 「次は無理せず、少しずつ鍛えよう」と決意した瞬間、ふくらはぎが再びズキリと痛んだ。

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痛みに顔をしかめながら、鶏肉をもう一口。筋肉もチキンも、焼きが入りすぎると壊れるんだな、と苦笑いする。 窓の外では隣人がランニングを続けている。来週こそは、治った脚で隣人に追いついてみよう。いや、まずは隣人のペースを見て、チキンのように慎重に走るべきかもしれない。

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祖母が毎年くれる手編みのセーター。正直、デザインは派手で着るのをためらうけど、冷えた部屋で羽織ると心まで温かくなる。 ある年、編み物をやめた祖母から手紙が届いた。「今年はこれで最後ね。編む力が少し足りなくなってきたから」 最後のセーターを着て、俺はそっと言った。「今までありがとう」

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夜のコンビニで疲れたサラリーマンが缶コーヒーを置いた。「長い一日でしたね」と声をかけると、少し驚いて「そうだな」と苦笑い。翌日、彼はまた同じ缶コーヒーを手に「君のおかげで少し楽になった」と言った。その言葉が、じんわり胸にしみた。

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深夜のコンビニで、学生が「一番辛いカップ麺どれですか?」と聞いてきた。適当に激辛ラーメンを勧めると、翌日彼が泣きそうな顔で来店。「おい、辛すぎて死ぬかと思った!」と怒るので謝ったら、カゴには同じラーメンが三つ入っていた。「いや、美味かったんだけどね!」って。大層気に入ったようで。

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居酒屋で盛り上がる友人たち。「お前の好きなタイプは?」と聞かれ、勢いよく「好きになった人がタイプだな!」と答えると、「いや、それ当たり前だろ」と。その後の会話、微妙に盛り下がった。悪い回答ではなかったはずなのに。気まずさに耐えきれず、唐揚げをひたすら食べた夜だった。

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あの日の夢は巨大な遊園地で遊び回るものだった。ジェットコースターは雲を突き抜け、メリーゴーランドの馬は本物のように駆け出した。笑い声とポップコーンの甘い香りが混ざっている。けれど目覚めた瞬間、誰と遊んでいたのかを思い出せない。たしかに楽しかったのに、その誰かがぼんやり霞んでいる。

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夢の中、街はキャンバスのようだった。歩くたびに足元から色とりどりの花が咲き、建物は絵本のようにページをめくるたび変わっていく。知らないはずの友人たちと笑い合い、空を飛び、星を掴んだ。けれど最後に「またね」と手を振った瞬間、名前も顔も覚えていないことに気づいた。

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縁起の良い初夢だった。障子の向こうには富士山、鷹が舞い、茄子が縁側に並んでいる。これぞ縁起がいいと喜んでいたら、突然茄子が話し出した。「おい、俺たちの出番、毎年これだけかよ!」と怒り、鷹も「飛ぶの大変なんだぞ!」と愚痴をこぼす。富士山だけは「今年もよろしく」とどっしり構えていた。

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夜空に流れ星が走り、二人で同時に願い事をした。 「何を願った?」と聞くと、「それは言っちゃだめでしょ」と君が笑う。 手を繋ぎながら歩く道、遠くの街明かりが星座みたいにきらめいていた。 「この景色、ずっと忘れたくないな」 君の横顔が、一番きらめいて見えた夜だった。

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「空飛ぶ魔女なんて、もういないよ」 そう噂される中、私は古びた箒に跨り夜空を駆けた。 煙突から覗いたのは、疲れた顔で眠る少年。 テーブルには開きっぱなしの魔女の絵本。 ページの端には「本物を見たい」と幼い文字。 彼の枕元に古い羽根を一枚置いた。 「信じる心があれば、きっと飛べるよ」。

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全打席ホームラン。観客も敵チームも驚いていたが、俺たちは真相を知っている。ピッチャーが放った球は、宇宙を経由し光速で戻ってきている。だからバッターは、地球に帰ってくる瞬間を狙うだけ。 「スイングで1光年分のエネルギーを使うけどな」 ところで、次の相手チームの監督はNASAの人らしい。

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打球が超スローで飛んでいく。「あんなの外野が捕れるだろ」と思った瞬間、異変が。ボールが逆走し始めたのだ。ピッチャーが投げた瞬間の時空に戻り、バットに当たり直し、また逆走。無限ループの末、ボールは摩擦熱で燃え尽きた。 「審判!これはホームランですか?」 「ルールブックに書いてない!」

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小児の僕は、初めて自転車に乗れた。転びながらも、風を感じる自由に心が躍った。母は笑いながら『頑張ったね』と言い、僕は『明日も挑戦する』と固く誓った。幼い夢が今日、少しだけ大人になった瞬間だった。そして、遠くの交差点に光る未来を見つめた。その日、未来は僕の足元にあった。

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私はよく順番を間違う。卵は溶いてから鍋に入れるべきだし、ハンドクリーム塗る前にリップを開けておくべきだし。それでも誰かに怒られる訳ではないし、幸不幸にも関係ない。 先日、「ここのお店美味しいんだよ」と後輩に言ったら、「友達と行ってみますね!」と言われた。台詞の順番、間違ったかな。

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部屋の掃除をしていたら、昔の俺からの手紙が出てきた。小学生の俺は「未来の自分へ。まだ彼女はできてませんか?」と書いていた。 「……やかましいわ」 と一人言を呟いて封筒を燃やす。ついでに年賀状も燃やす。何年も“独身”って書かれてるのが腹立つから。