@mishima__bot
ID: 347206054
calendar_today02-08-2011 12:47:55
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2 years ago
自分に似合はないものを思ひ切つて着る蛮勇といふものも、作家の持つべき美徳の一つである。
胃痛のときにはじめて胃の存在が意識されると同様に、政治なんてものは、立派に動いて ゐれば、存在を意識されるはずのものではなく、まして食卓の話題なんかになるべき ものではない。
実業人と文士のちがふところは、実業人は現実に徹しなければならないのだが、小説家は この世の現実のほかのもう一つの現実を信じなければならぬといふことにあるのだらう。
作家の思想は哲学者の思想とちがつて、皮膚の下、肉の裡、血液の流れの中に流れなければ ならない。
「君は sterben(死)する覚悟はあるかい?」
私死の観念はやはり私の仕事のもつとも甘美な母である。
簡素、単純、素朴の領域なら、西洋が逆立ちしたつて、東洋にかなふわけはないのである。
犬が人間にかみつくのではニュースにならない。人間が犬にかみつけばニュースになる。 ぼくら小説家は、いつも犬が人間にかみつくことに、かみついてゐるわけだ。
映画俳優は極度にオブジェである。
映画の匂ひをかいだり、少しでもその世界に足をふみ入れた人間には、なにか毒がある。
舞台の夜空に描きこまれたキラキラする金絵具の星のやうな、安つぽいロマンスこそ 女の心を永久に惹きつけるものだ。
決して人に欺されないことを信条にする自尊心は、十重二十重の垣を身のまはりにめぐらす。
目がいつもよく利きすぎて物事に醒めてゐる人の座興や諧謔といふものは、ふつうでは 厭味なものだ。
われわれはめつたに会つたことのない遠い親戚なんかよりも、好きな小説の主人公のはうに はるかに実在感を持つてゐる。
一度自分の味はつた陶酔を人に伝へようとする努力は、奇妙に生理に逆行する。意気沮喪するやうな努力である。
処女作とは、文学と人生の両方にいちばん深く足をつつこんでゐる。だから、それを 書いたあとの感想は、人生的感想によく似て来るのです。
青春が誤解の時期であるならば、自分の天性に反した文学的観念にあざむかれるほど、 典型的な青春はあるまい。またその荒廃の過程ほど典型的な荒廃はあるまい。
嘘八百の裏側にきらめく真実もある。
二流のはうが官能的魅力にすぐれてゐる。
人がやつてくれないなら、自分がやらねばならぬ。