劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎『#紅鬼物語』御伽話あるいは幻想怪奇小説のような趣で描かれる嘘と真の鬼の物語。鬼とは血の異なりか、はたまた悪や残酷か。柚香光さんの妖艶と美麗、鈴木拡樹さんの美声、そしてもちろん円熟の劇団員の至妙にうっとり。柝の響きがいつにも増して切なく艶やかな仲夏の候

こまつ座『#父と暮せば』戦後"命"の三部作の筆頭が装いを新たに。託されたバトンと祈りの系譜の美しさ、懊悩と戒めを抱え生きる美津江の心に不意に芽生えた希望と葛藤の相剋がひたすら胸を打ちました。松角洋平さんの慈しみ深い父と瀬戸さおりさんの清廉と健気さが際立つ娘の造形、終幕の感慨が出色

銀杏BOYZ『昭和100年宇宙の旅』ツアーファイナル。直向きさと感傷、歌心と愚直なほどのリフ、率直と矛盾...青春と人生の真理とアンビバレンスをありありと顕現させるバンドの万感のライブ。激熱のモッシュ＆ダイブに災禍の収束を実感しつつ、甘くて怖くて痛くて嬉しい感情のサラダボウルに耽溺しました

『#消えていくなら朝』家族の光景を描くシリーズ第3弾は鬼才蓬莱竜太さんの赤裸々な開陳の悲喜劇。疎遠だった家族が顔を合わせ巻き起こる激しい対話と揺れる関係の顛末が切実。家族は常に無条件無遠慮なものか。フルオーディションで役を担った大谷亮介さん大沼百合子さん関口アナンさんらの迫真が秀抜

キャラメルボックス『#さよならノーチラス号』創立40周年記念の幕開けは脚本演出成井豊さん最愛の作品の再々演。大切な人を信じ幸福を祈る人間の直向きさ美しさそして切なさ。人が人を想う気持ちを描き続けてきたその真髄が鮮やかに顕現する至福の観劇体験。無二のピュアネスのますますの発露を祈念

good morning N°5『#執着の泡』非凡であることに取り憑かれた身勝手な男ら度し難くも愛おしい人間たちの思いと人生が交錯するめくるめく物語。作演出澤田育子さんの極彩色でありながら直向きで純粋な魂の咆哮と中村 中さんのノスタルジックで呪術的な旋律、役者陣の体当たりの躍動のフュージョンが痛快

キャラメルボックス『#ナナメウシロのカムパネルラ』自身の身代わりとなって命を失った男の声と過ごした4日間の数奇な偶然と必然の物語。荒唐無稽の中にリアリティが、可笑しみの中に悲しみと切なさが、不条理の中に優しさと思いやりが煌めく劇団の真髄を感得。劇場中に演劇愛が満ちた万感の周年公演

『#キャプテン・アメイジング』マントを纏いスーパーヒーローに扮する一人の男とその娘の冒険と葛藤の物語。弱さと悲しみから逃れようと自らに暗示をかけ孤軍奮闘する姿は健気で意地らしい一方、最後の戦いに挑む姿は真の勇気と強さに溢れ胸を打ちました。不完全なすべての大人へ捧げる優しきアンセム

尾方宣久さん俳優業引退の知らせに絶句 MONO作品はもちろん名だたる劇団の客演でも至妙の造形を叶え、演劇の素晴らしさとその真髄を顕現させ続けてくださった名優の決断に今はただ敬意と感謝を

『Only 1, NOT No.1』ふぉ～ゆ～と梅棒、日本のショービズ界を牽引する無二のグループのコラボレーションが3年振りに復活。夜の街の饗宴をケレン味たっぷり且つハートウォーミングに描く様は鮮烈にして痛快。ノン・バーバルならではの懐の深さ、余韻、叙情はやはりOnly 1！遠山晶司さんの早替えも健在

『#ある男』不確かなアイデンティティと愛の寄りどころ、不条理と偽りについての静謐で暗鬱な物語をミュージカル化。世界初演の作品をつくり上げることの困難に果敢に挑んだカンパニーすべての皆様に衷心からの敬意を

『#ナイツ・テイル -騎士物語-』ARENA LIVE

サルメカンパニー『サルメ版 #黒い十人の女』市川崑監督の昭和の名作を意欲的に舞台化。市子、双葉、三輪子のみならず十人の女性への慈しみと思いやりに満ちた脚色が秀抜。二幕冒頭の独白は各々の人生の輪郭を鮮烈に見出す迫真と感動。幕間の高揚からの振り幅も瀟洒。愛憎そして命の顛末の余韻深さよ

ウクライナ国立バレエ『親子で楽しむ夏休みバレエまつり』「ゴパック」「ドン・キホーテ」など華やかで楽しいプログラムに耽溺。究極の芸術表現を叶えるプリンシパルたちの卓抜した肉体と精神、コール・ドの一糸乱れぬ連携と調和に感服。会場にはたくさんのリトル・ダンサーたちが。普遍の平和を祈念

タカハ劇団『#帰還の虹』太平洋戦争末期、戦意高揚画を描く画家たちと彼らを取り巻く人々の懊悩と真理の物語。芸術、倫理、生業そして宿命。不条理で残酷な現実の中で各々譲れぬものを抱えて命を燃やす姿は切なくも胸を打ちます。藤澤、内山あるいはヘス、アイヒマン、オッペンハイマーそして私たち

『#レ・ミゼラブル ワールドツアースペクタキュラー』ロンドン初演40周年を記念したステージドコンサート。キャストオーケストラ衣装セット照明すべてが豪華で圧巻。革命前夜のフランスとそこに生きる人々の悲哀と崇高が顕現する様に耽溺しました。インターナショナルキャストの声量と表現の豪奢が鮮烈

『#ハリー・ポッターと呪いの子』何度もこの舞台に吸い寄せられる個人的理由はやはりシリーズ屈指の脚本と命題か。“偉人”ハリーが親としてはいささか頼りなく或いは不全であること、ドラコらとの率直で胸打つ対話、アルバスそしてスコーピウスが体現する人間の崇高により省察と克己を見出す顛末が深遠

『#あんず ～心の扉をあけて～』幼き頃の喪失の記憶に背を向けて生きてきたひとりの女性の悲しくも胸打つ再生のグリーフワーク。子役と呼ぶことを憚るほどの若き俳優たちの瑞々しくも卓抜の表現、同作25年ぶりの出演となる清水彩花さんの陰影と余韻、西川大貴さんを筆頭とする製作陣の渾身に最敬礼

『#人形ぎらい』三谷文楽の新作はモリエールの『人間嫌い』をモチーフにした文楽人形による文楽人形の物語。人格を持った人形の宿命と克己、人形と人形遣いの尊く深遠な絆、伝統芸能と演劇に通底する創作の真髄と意味と価値について思いを致す万感の観劇体験。終幕の陀羅助の凛々しい啖呵と見得に感涙