不思議な旅をしながら、母の日記をなぞるように“自分の物語”を書き重ねていく小説。最初は複数の声や時系列が入り乱れて混乱しましたが、火山の町で『アンネの日記』を見つける場面を境に「過去を創作で救う」というテーマが見えてきて、読み終える頃には温かさが残りました。

尖りまくった過去ログにmixi日記や政治語りなど“黒歴史"を自分で解き放ってセルフツッコミ。痛々しさと面白さが混じり合う感じ。かなり独特。 読んでると自分の黒歴史も思い出して、なぜかちょっと救われる感覚がある不思議な一冊。 誰にでもある（？）青い頃が丸ごと詰まってます。

銅版画の新星・真琴が、美術界を牛耳る評論家・影塚に才能を買われる代わりに、じわじわ心を蝕まれていく物語『食刻（しょっこく）』 作者が美大出身なので書ける生々しい美術界の裏側と欲望がもたらす破滅。 鮮烈な芸術描写と容赦ない人間の欲望が交錯し、読後は背筋が寒い。

「善意の嘘」って本当に相手のため？ そんな疑問から、人が嘘をつく心理や倫理をじっくり解きほぐす新書でした。読んでいて、あえて真実を隠した経験を鮮明に思い出し、ちょっと胸がチクリ。カントや現代哲学者の議論も出てきますが、例が具体的なので読みやすく、日常に絡めて考えられます。

予備校講師・玲の正体はフランス特殊部隊出身の“シスター”！ 墨田区の下町が舞台のハードボイルド、『シスター・レイ』。 ヤクザと外国人グループの抗争は迫力アリ。一方で在日コミュニティの苦悩や差別がリアルに描かれ、心に突き刺さる。

朝のドリップが“自分だけの小さな儀式”になる本です。著者はワールドバリスタチャンピオンの #ジェームズホフマン。豆の鮮度や挽き目の違いを理論的に語りつつ、失敗した時の対策まで丁寧に教えてくれます。写真も豊富で、カフェ気分が味わえるのが嬉しい。

1985年に北海道で起きたバス事故と、14年後の新宿での首吊り事件。二つの悲劇を追う刑事コンビの捜査が、少年と少女が背負った“消えない喪失”を暴き出します。

「妻と愛人の同居」という衝撃の設定はドロドロ必至…かと思いきや、夫が失踪した途端に残された二人の関係が静かに変化していく。料理を一緒に作るシーンでは、抑え込んできた感情がじわじわと浮かび上がり息を呑みました。

「寒いと風邪をひく」「金縛りは霊現象」…そんな“当たり前”を、データや実験でやんわり検証していく一冊。難しそうな科学を、身近な例から体感できるのが魅力でした。ノーベル賞学者でもバイアスに陥る話など、意外なエピソードも多数。

「冷凍保存の死体が蘇生し、吸血鬼が闇のレストランを騒がす…？」と見て、正直ちょっと荒唐無稽だと思っていました。でも本作はそこを違和感なく“あり得る世界”にしてしまう不思議な吸引力があります。

引きこもりの映画オタク探偵が“名画の知識”を武器に事件を解決する連作短編集。『ニュー・シネマ・パラダイス』『セブン』など多彩な作品が引用され、映画好きにはニヤリとできる仕掛け満載です。

高校で起こる不可解な死。それは恩師の、未完小説と同じ手口。一言で言って「二度美味しい」タイプの学園ミステリでした。 探偵役コンビの教師＆女子生徒が、解決編のない密室トリックの真相を追う二重構造が斬新で、作中作と現実事件のリンクにゾクッとしました。

30年服役し浦島状態の元ヤクザ・鳶伊(とびい)が、令和の若者＆拾った子猫とシェアハウス暮らしを始める話。 昭和の義理人情と今どきの打算が衝突しつつ、互いに少しずつ歩み寄る展開がたまりません。 猫が見せる小さな仕草や不器用な主人公の奮闘が心を締めつけ、読後はほろり。

“スタンドの母”目線で高校野球を描く一冊。息子のエラーに声も出せない悔しさや、父母会のギスギス感、そして最後に報われる母と子の絆……ありきたりな展開かと思いきや、リアルな苦労や葛藤に触れる描写が胸を打ちます。

取り壊し前の古いマンションで暮らす人々の“ちょっと壊れた日常”を連作で描いた短編集。 ペット禁止なのに、なぜか全編“動物的な衝動”が充満していて、生々しい欲望や孤独に胸がざわつきます。

普通に「ありがとう」と言うだけが感謝じゃなく、「当たり前への感謝」→「逆境への感謝」と段階を踏むことで脳がどんどんポジティブに変わる、という発想が実行しやすくて良いですね。自己啓発本なのに押しつけがましい説教感が少ないのも読みやすいです。

全6編のどれも、“医学では割り切れない恐怖”がメインテーマになっているように感じました。特に「絵馬」は、信仰を笑う主人公が追いつめられる展開がリアルでゾクゾクしました。逆に「リアル若返りの泉」の結末はショックすぎて、夜に読むと後悔するレベル。

交通事故（しかもひき逃げ）で人生を狂わせた女性の“その後”が描かれます。読み進めるほどに彼女の喪失感や孤独が痛いほど伝わってきて、正直かなりきつい。

若くして聴力を失ったショック、戦時下での孤独な制作、そして36歳という短すぎる生涯。36歳で夭逝した画家の人生と、遺作を守り抜いた家族の物語が、息子ならではの視点で丹念に描かれた画家の伝記です。そこだけ見ると悲劇の画家のように思われるかもしれませんが、実は竣介には芯の強いユーモアと家

SNSで見かける「匂わせ自慢」や「高級サービス利用」が、実は“優越感を演出する舞台”として成り立っていると説く一冊です。単なる批判にとどまらず、「この欲求をどう活かすか」まで考察しているのが面白い。