先に布団へ入り寝たふりをしていたら、彼奴がそっと背後から俺の身体を抱きしめてきた。心地好い体温に睡魔が一気に押し寄せ、彼の手を握ったまま意識を手放した。

ダザイは何でも器用にこなす。先日社長の似顔絵を見せてもらったが、完全に楳○かずお風だった。

「クニキダ君、可愛い」 「だから可愛いはやめろと」 「可愛い」 「だから」 「可愛い」 「……っ」

電車の中吊り広告を見ていたら動物園に行きたくなった。お互い今週末は非番で、週間の天気予報は晴れ。ねえクニキダ君、一緒に動物園行こう？

ある日ダザイの家へ行くと、大きめの姿見が置かれていた。通販で買ったらしい。身だしなみを気にするのは善い事だと云うと、何故か奴は薄ら笑いを浮かべた。

「うっわ蝉爆弾だ！！気をつけてクニキダ君！！」 「爆弾は言い過ぎだろう。蝉たちも色々大へ……うわああああ！！」 「あーあ、いわんこっちゃない」

仕事中暇だったのでクニキダ君の髪で遊んだ。三つ編みにして、ポニーテールにして、ツインテールにしたところで肘鉄を食らった。痛い。

国：頼むから夜中にジェ○ガを始めるな。しかも仮想対戦相手を作るな。ジェームズって誰だ。

太：怪我をする。指先を切るとか、軽い火傷とか、そういう怪我だ。少し悲鳴を上げただけで、彼は血相を変えて駆け寄ってくれる。だから、わざと怪我をする。

クニキダ君は可愛い。見た目の事ではなくて、沸点の低いところとか、揶揄った時の反応とか、時々見せる笑顔とか、不意に手を繋いだときに真っ赤になるところとか、滅茶苦茶可愛い。

某夢の国に行きたいと駄々を捏ねたら、クニキダ君は渋々了承してくれた。翌日部屋にガイドブックが3冊増えて、さらにその翌日またガイドブックと雑誌が1冊ずつ増えた。完全攻略するつもりらしい。

布団に入る。隣から「お休み」とダザイの声が聞こえる。心臓が早鐘の如く鳴り始める。如何やって告げたら善い。身体が火照って仕方ないのだと。

「ふははは人類よ！　羨ましいだろう！！　こんなにも料理が上手で世話焼きなオカン体質の男が私の恋人なのだふはははは！！」 「誰だ此奴に昼間から酒を飲ませたのは」

国：腕枕をされると翌日やたらと首が凝る。けれど、ダザイの体温を感じているとすぐに眠気が訪れる。目が覚めて、一番にお前の顔を見るのも悪くない。そうして、また首が凝る。

彼奴と肌を重ねる行為は、全ての仮面が彼奴から剥がれる瞬間を目にすることが出来る、俺にとっては貴重な時間だ。

太：この間仰向けに寝そべっていたクニキダ君に巫山戯て覆い被さったのだけれど、その時お尻に頭を乗せたらそれはもう極上の寝心地で、毎日乗りたい衝動と戦っている。

今日は久々に社長と碁を打つ為、ダザイを先に帰らせた。――筈だったのに、何故お前は扉の前で体育座りをしているんだ。

ダザイの唯一の美点は顔だ。あそこまで整った顔立ちを此れまでに見たことが無い。そう敦に告げると「惚れた欲目ですよ」と呆れた顔をされた。

「民間療法ってあながち侮れないのだよね」 「まあそうだな」 「今度クニキダ君が風邪ひいたら、お尻にネギ挿して善い？」 「止めろ」

これ、チーズケーキだよね？しかも手作りだよね？一週間前に食べたいなってぼやいたの聞いてたんだ？というか、なんで作ろうと思ったの？どうせ君のことだから、散々練習したのでしょう？よーし、食べたら押し倒す。