「僕はね、関口。自分の関わることで人が死んだり、傷ついたりするのはまっぴら御免なんだ。特にこんな馬鹿らしい事件は、放っておいても勝手に終わるよ」（中禅寺秋彦／姑獲鳥の夏）

匣にみつしりと祖母が充満した。（魍魎の匣）

「善哉は急げ、と云います。いざ相模湖ですよ」（鳥口守彦／魍魎の匣）

「御行 奉為ーー」（巷説百物語）

「小豆洗いの出た後は、水に落ッこちるッて。ねエご隠居？」（おぎん／巷説百物語）

「それはそうだろうよ。幸せになることは簡単なことなんだ」「人を辞めてしまえばいいのさ」（中禅寺秋彦／魍魎の匣）

「思い知ったかこの間抜け。来ると思ったところに来ないのが闘いの基本じゃないか。来ると思ったところに来るのはお笑いの基本だ！喧嘩は卑怯な方が勝つのだ。成文化した卑怯こそ武道だ！」（榎木津礼二郎／塗仏の宴）

どこまでもだらだらといい加減な傾斜で続いている坂道を登り詰めたところが、目指す京極堂である。（姑獲鳥の夏）

「何が邪魔なもんか。こんな猿男と二人っきりで陰気臭い病院に行くと思っただけで、今朝から三度ばかり首を吊ろうかと思ったぐらいだ。何、これで京極の奴でもくっついて来た日にゃあ陰気の極みだが、敦っちゃんだったら大歓迎だ。何なら関君、君が帰ってもいいんだ」（榎木津礼二郎／姑獲鳥の夏）

匣の中身が知りたかったり、夢を無限に繋げてみたり、檻から出ようとしたり、理に搦め捕られたり、将また、宴に酔い痴れたり。私の関わった事件はどれも、夏に萠え立つ陽炎のようなものだった。（陰摩羅鬼の瑕）

ああ、生きてゐる。　何だか酷く男が羨ましくなつてしまつた。（魍魎の匣）

「おお！そこに人殺しが居る！」（榎木津礼二郎／陰摩羅鬼の瑕）