貧しい母子家庭で育った主人公の少女が30歳代の女性と出会う。未成年ながら彼女とスナックを開き同年代の2人の少女も加えた4人で擬似家族を始めるが試練に見舞われ犯罪行為に手を染める。少女が裏社会の犯罪の実行部隊として使われ貧困という不条理が描かれ圧倒的リアリティ　 #読了

病に冒された弟と姉との時間を描く表題作
生活臭がない病室。弟と2人静かに存在することによって外界とは遮断されそこに完全に近い安らぎを感じ安心する主人公。日常の生から切り離され死へとつながり純粋な存在になっていく弟があまりに愛おしい。独特の静けさ喪失感　＃読了

灰の劇場/恩田陸
始まりは三面記事。一緒に暮らしていた女性2人が橋から飛び降りて自殺をした。「なぜ」が著者の脳裏を駆けめぐる。事実に基づく物語。死をめぐる思索、人間の脆さなどが切実に迫る。人が何によって生きているのか著者の思いをのぞき見できて面白かった　＃読了

ソローはウォールデン湖畔の森の中に自らの手で小屋を建て自給自足の生活を始める。自然と共に生きた著者の生活記録。自然との出会いを通して自分とも出会う喜びが生き生きと描かれ豊かさとは何か。どう生きるか人生観も随所に記された哲学の書でもあった　 #読了

太陽の棘／原田マハ
終戦後の沖縄。米軍の若き軍医と沖縄の画家たちの交流の物語。事実をもとにして描かれ芸術活動を行う彼らに画材や絵の具を米国から取り寄せ援助する。悲惨な戦争の影を引きずりながらも未来を守ろうとする人たちに深い感動をもたらしてくれた　 #読了

旅の途中で山間にある畑つきの空き家を見つけ念願の自給自足的な暮らしを目指すが農業の厳しい現実を知ることになる。美しくも厳しい自然が描かれ開放的な気分になる物語。快適な田舎暮らしをイメージしていたが覚悟も必要だと思いました　＃読了

ピカソ「ゲルニカ」をめくる壮大な絵画ミステリ。反戦のシンボルをめぐって人々の信念や欲望が交錯する。ピカソの想いがダイレクトに形として表され芸術という枠をこえて人々の距離をぐっと近づけたゲルニカ。自らの信念を持って生きた人々の人間ドラマを描いた作品　＃読了

十角館の殺人/綾辻行人
島に建つ奇妙な建物　十角館で起こる連続殺人事件。復讐劇が始まることを告げるプロローグ。期待感が高まる筆力で人間の恐ろしさの描写も秀逸。生き残るのは誰か？ページをめくる手が止まりませんでした　 #読了

性的価値を心の拠り所とする母は豊胸手術を望む。女を感じさせる母に娘は嫌悪感を抱き感情を爆発させていく。からだは自分とは無関係に変化し自分の意思通りにはならない根源的な問題、葛藤、奥に抱えているもの。哲学的なテーマでした　 #読了

苦学生の主人公がバイト先のスーパーで何でも売れる嘘つきのおばさんからもらった宝石箱が人生に影響を与える。宝石箱のような物語ではなく貧困や労働環境など日本が没落した未来、その中でそれぞれが、どう生きていくか重いテーマだったが終盤は静かに胸を打つ　 #読了

成瀬あかりが西武大津店に閉店するまでの1ヶ月間、毎日通い出す場面から始まる。独自の世界を疾走する成瀬の型破りな言動にのまれ一気に読めた。空気は読まないスマホも持たず自分のやりたいことに一直線。自意識から解放された成瀬はカッコいい。＃読了

魂の伴侶と再会するために日本列島を横断する壮大な物語。犬は死の影を引きずる流れ者のように一時生活を共にする。どんな悪党も犬の前では優しくなる。自分が犬を助けたのではなく犬に癒され助けられていることに気づく。無償の愛を与えてくれている犬に涙腺崩壊です　＃読了

監視社会の人間とは？を問う物語。すべての個人情報を提供すると豊かな生活ができる実験都市を舞台。プライバシーを犠牲にして得られた平和に価値はあるのか。人間の内なる闘争がリアルだった。人は便利さの前では抗えない　＃読了

写楽とは誰なのか謎に迫るミステリ。写楽は突然現れて突然消えた浮世絵師。浮世絵研究家の主人公は写楽の仮説の検証を進め物語は展開する。独創的で驚かされる写楽論は興味深い。江戸時代の背景が緻密に描写され風習や文化を織り交ぜ深みのある魅力的な作品だった。 #読了

北斎の娘　絵師、葛飾応為の生涯。
衣服や食事にもこだわらず、ひたすら画業に邁進し自分らしい絵とは何かを模索する。文章が巧みでキャラクターが動き出すかのような躍動感があった。セリフのテンポも軽快で気持ち良い生き方が心を明るく照らしてくれる。　 #読了

舞台は18世紀のコルセットやドレスを収蔵する服飾美術館。補修士として働く女性は男性恐怖症を抱え目立たぬよう生きていたが並外れた才能と技術をよりどころに少しずつ克服していく。洋服に込めた思いが細部まで丁寧に描かれ繊細なレースや刺繍の優美な世界を堪能できた　 #読了

会社という舞台でどこにでもいる世渡り上手なチャラ男を軸にした物語。社内でひそかにチャラ男と呼ばれている部長がいる。複数の人がチャラ男について語るとチャラ男にも理由と根拠があることに気づく。ユーモアのセンスがあり鋭く言い切る文章が好みでした。面白かった　 #読了

作家デビューの舞台裏。ゲームセンターで働きながら小説を書いてきた主人公は念願の作家デビューを果たす。周囲の態度が変わり急に「先生」と呼びサインを求める同僚。「広報」として利用しようとする上司。心の中はモヤモヤ。繊細な心の動きを描く筆致が冴えわたる　 #読了

かけがえのない今日を描く
型にハマった人生はつまらないと形容されているが今では平凡な生活は容易ではない。本書は普通を懸命に生きる夫婦の日常を丹念に描く。平凡な生活に潜む危うさと愛おしさ。どこか哀しい影を帯びているところに良き時代への郷愁を誘う　 #読了

恋にまつわる短編集。
絵に描いたような完璧な恋愛ではない著者が生み出すキャラクターはどこか不完全さが残っていて逆に魅力的に思える。好きな人に良いところを見せようと意気込んでない不器用な人たち。普通の恋愛とは違う親密な関係ではあるが精神的な親密さを感じた　 #読了